biku-01.gif桐製・漆塗りタナゴ箱

タナゴ用のビクは、対象が世界最小と言える魚だけに昔から手の込んだ造りのものが多い。

本品はタナゴ箱としてはやや大きめで、横20センチ強、高さ約17センチ、奥行き11センチ強の桐製。塗りは、表面が赤みのやや強い茶系の透き、内側が黒漆で、全体に渋い仕上がりとなっている。

エサ入れと魚の落とし口が別々に外れるという凝った造りのうえ、エサ箱を開けるための真ちゅう製のツマミも立ち上がるタイプで、フタ部分の蝶番(ちょうつがい)とともに、このタナゴ箱の気品のようなものをかもし出している。十分吟味された素材が使われているだろうことは、寸分の狂いも反りもない上ブタが証明している。

昭和30年代の作品と推定。 
ビクとエサ箱 -

biku-02.gifマブナ用桶ビク

かつては桶金など、伝説的な名工がいたと言われる釣り用桶ビクの世界だが、ほとんどが風呂や水くみ用の桶を作っていた職人が、本業のかたわら制作してきたものだけに、現在では新作を見ることはまれ。

本品は、昭和48年購入したものというが、特別注文以外で、一般の釣り具店に桶ビクが並んだのは、そのころが最後のことだろう。九寸幅(27センチ)、高さ七寸強、奥行き四寸七分ほどの手ごろなサイズで、少しでも軽くと5ミリほどに削り込まれた本体が、職人の心意気を感じさせてくれる。内箱はエサ、小物入れ用に3つに区切られ、本体の底には竹のスノコ付き。細い銅で編まれたタガもスッキリしており、かっこのいい仕上がりとなっている。

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biku-03.gifエサ箱各種

3点並ぶうちの中央のものは高さもあり容積もかなりのもの。底が目の細かい金網でできているところから推定すると、おそらく川虫用で、それもクロカワ虫をいれたハヤ釣り用と思われる。最近は専門に狙う人も少なくなってしまったハヤ(ウグイ)だが、昭和40年代ぐらいまでは、ポピュラーな釣りで、冬場の寒バヤも人気があった。本品はかなり使い込まれており、ベテランに愛用されたものと思われる。

左側は、表面が透き、中が朱の漆塗り。バンド通しタイプなので、清流や渓流用と思われる。

右側は白木の前差しタイプ。なかなか凝った造りで金網を施した息抜きも普通の丸型ではなくて、流水型とでも言うのか遊び心が現れている。川の小物釣り全般に向く形状。

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biku-04.gif道具入れ兼用ビク

クーラー(アイスボックス)が普及するまで、水箱ととも道具入れ兼用ビクは多くの人に使われた。特に左側の大きいタイプは、アユ釣りの人に愛用されたところから、アユカゴなどとも呼ばれていた。3段または4段カゴの場合、木製のフタのある最上段に仕掛け、中段に釣った魚、下段は弁当やその他かさばるものをいれて使った。古い釣り雑誌などではバックネットと呼ばれた網リュックに入れて背負われた写真がよく見られる。

写真の大小とも上質のもので、大きい方は横幅が約30センチのところから尺カゴと言われていたようだ。

なお、小型には銘が入っていないが、尺カゴは渓流ビクで名高い静岡の名工・籠寅の作品で銘入り。

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biku-05.gif古典タイプ兼用ビク

本品の制作年代は不詳だが、おそらく大正から昭和初期と思われる。

上ブタの下には、もう1段の道具入れ用と思われる内カゴがあるが、これによく似たカゴが昭和10年4月号の雑誌「釣之研究」に、九州・松本製作所の紹介グラビアにあった。しかし、その製品には上ブタはなく普通の2段式。それでも、全体としてはそっくりといえるので、本品は同製作所の製品あるいは、九州産のカゴビクという可能性は高い。

均一に削られたヒゴでていねいに編まれており、仕上がりは上質。もちろん現在では新作を見ることは出来ないが、大切に使うとすればまだ数十年は大丈夫と思える造りとなっている。

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biku-06.gif銅製缶ビク

缶ビクといえば、テカテカと光ったブリキ製で、網部分は青か赤の綿糸で出来た、ごく安価なものを懐かしく思い出すが、本品は高級品。

缶部分は直径15センチほどの円形で、使い込むほどに味が出る銅の打ち出し。網部分は絹の手透きと思われ、5つある金枠は真ちゅう。魚入れ口は真ちゅう枠と籐の編込みとなっており、ブリキの缶 ビクとはすべてが大違い。

また、水を入れた時、リングを介したヒモで重量を支えるように出来ており、過重による網の破損を防いでいる。

全長は63センチほどと小振りで、モロコ、ヤマベ(オイカワ)、タナゴなど川の小物やアユの毛バリ釣りなどに使われたようだ。

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biku-07.gif渓流用・奥多摩ビク

元来、竹で編まれたカゴビクは、それぞれの地方で製作、継承され独自の形状を持っていた。例えば、甲州ビク(山梨県)、郡上ビク(岐阜県)などその典型だが、昭和40年代以降は、安価な東南アジア製の渓流用ビクが多く出回り、国産のビクは次第に造る人も少なくなってしまった。

本品、奥多摩ビクもその1つ。東京都を流れる多摩川の上流、奥多摩地方で昭和40年ごろまで造られてきたもの。形状は、郡上ビクに似ていて、上部がややふくらみ下部の奥行きは狭くなっている。これは魚を重ねた時に、全重量が底部の魚に掛からないためのようだ。見た目は素朴ながら、案外ていねいな仕上がり。

容量により大きさがいくつかあり本品は一貫目用。
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shoseki-01.gif何羨録(かせんろく)

現代に伝わる我が国最古の釣りの本といえるのが、この何羨録。著者は陸奥黒石藩三代当主の津軽采女(つがるうぬめ)で、亨保8年(1723年)の著といわれている。

内容は、津軽采女が江戸詰めの折り熱中したと思われる江戸前のキス釣りをメーンにした上・中・下の3巻からなる解説。上巻は釣り場の詳解、中巻は釣り具やエサについて、下巻は釣期や天候について。釣り場図や竿、仕掛け図も盛り込まれた実にていねいな内容で、後に出た「漁人道知辺」は、何羨録を模したものといわれるほど。

写真の本書は、釣り具商みすや針主人・中村利吉写本(明治21年)の復刻版で、上中下を1巻にまとめた釣り文化協会発行(1981年)のもの。 
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shoseki-02.gifアングリング イン ジャパン

昭和15年、当時の(財)国際観光協会が発行した日本の釣りの英文案内書。奥づけに記されてはいないが、著者は「釣技百科」「写真解説・日本の釣」などでおなじみの大御所・松崎明治。小はタナゴ、ワカサギから渓流のヤマメ、そしてイシナギなど船の大物釣りまで要領よくまとめられているほか、竿やウキ、ハリ、釣具店の様子など日本ならではのものが、写真や図入りで分かりやすく解説されている。

また、観光協会の発行だけに日光、松島、十和田湖や日本アルプスと当然のように観光ガイドも盛り込まれている。

なお、表紙はあの伊東深水画伯によるもの。
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shoseki-03.gif釣狂五十年(正・続)

明治から昭和初期にかけて釣りの世界で名が知られたという松岡文翁(文太郎)による昭和8年著の釣り解説書。

正では魚の習性から釣りの10か条、フナ、アユのドブ釣り、釣り堀、ハゼ釣りを収録。釣り10か条での季節、日並み、潮時、場所などの金言は現代にも通じるものが多くある。続では、釣りの面白味、6大条件のほか手長エビ、セイゴ・スズキ、ボラ、ナマズ、ハヤ、ヤマメ釣りの釣り方解説のほか、カイズ、タナゴ釣りについてはそれぞれの名士による文を引用して紹介。いずれも数学者という著者ならではの律義そうな人格が、その文ににじみ出ている。

正続の原本のほか、アテネ書房の復刻本も収蔵。

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