桐製・漆塗りタナゴ箱
タナゴ用のビクは、対象が世界最小と言える魚だけに昔から手の込んだ造りのものが多い。
本品はタナゴ箱としてはやや大きめで、横20センチ強、高さ約17センチ、奥行き11センチ強の桐製。塗りは、表面が赤みのやや強い茶系の透き、内側が黒漆で、全体に渋い仕上がりとなっている。
エサ入れと魚の落とし口が別々に外れるという凝った造りのうえ、エサ箱を開けるための真ちゅう製のツマミも立ち上がるタイプで、フタ部分の蝶番(ちょうつがい)とともに、このタナゴ箱の気品のようなものをかもし出している。十分吟味された素材が使われているだろうことは、寸分の狂いも反りもない上ブタが証明している。
昭和30年代の作品と推定。